スクウェア(現スクウェア・エニックス)を代表するRPGシリーズ『ファイナルファンタジー』(以下FF)の6作目で、スーパーファミコンで発売された最後のFFとして1994年に発売されました。それまでファンタジー色の強かった従来のシリーズとは雰囲気が異なり、スチームパンク色の強い世界観が特徴で、その独特の世界観は世界的.物語的に繋がりはないものの『VII』に引き継がれています。
また、今回は特定の主人公は存在せず、ストーリー展開によってはプレイヤーキャラが入れ変わったり、後半では自由なパーティを組めるのも特徴の一つです。

『IV』より採用されたリアルタイムの戦闘システム「アクティブタイムバトルシステム」(ATB)は本作でも健在で、今回ではコマンド待ち状態で他のキャラに順番を廻す事が可能で、より戦略を立てやすくなりました。また、各プレイヤーキャラ(全14人)にはそれぞれ固有の特技を持ち、シナリオの進行状況によっては自由にパーティを組む事ができるので、成長システムの自由度こそは低いものの選んだメンバーによって戦略性が大きく変わるのは面白い所です。筆者の場合、対戦格闘ゲームの様にコマンド入力することによって必殺技を繰り出せる"マッシュ"(プレイヤーの一人)を必ずメンバーに入れるほど気に入ってます。

システム面では大きな変更点が見られず、『II』の熟練度や、『V』のアビリティといった、FFシリーズならではの独自の成長システムは今回は見送られ、オーソドックスな経験値によるレベルアップ制を採用しています。その代わり『IV』の様にシステム面よりもストーリー性を重視した仕上がりとなっています。

インターフェイス面やバランス面といった基本部分の完成度の高さは流石スクウェア製といったところですが、それ以上に驚異に感じたのはグラフィックの描き込みの凄さ。当時のSFCソフトの最大容量24Mbitを使用しただけあって、ファミコン版シリーズ(I~III)の延長レベルだったIV&Vのグラフィックが、まるで見違える様にパワーアップされています(フィールドキャラの頭身が上がったのも理由の一つですが)。当時のSFCソフトとしては最高峰のグラフィックといっても過言ではなく、同社の『クロノトリガー』や任天堂の『スーパードンキーコング』が発売されるまでその地位を譲らなかったほど驚異的でした。
演出面もクオリティが高く、派手なエフェクトの戦闘シーンは勿論の事、墓から飛空挺が出るシーンや、オペライベントを初めて見た時は、「CDロムマシンに頼らずこれだけの演出を実現させるとは…」と衝撃を受けたほどです。もっとも開発側もSFCのスペックに限界を感じたのか、続編は次世代機(プレイステーション) へプラットフォームを移す事になりますが、ハード末期に見られるプログラミング技術の高さを実感できます。

技術面、演出面だけでなく、『VI』に登場する各キャラクターはどれも魅力的で、敢えて特定の主人公を用意しなかったのも納得します。特にプレイヤーはそれぞれの過去や意志を持っていますが、それがゲーム中に語られるのはごく一部分で、それ以上の情報はプレイしている本人の想像に委ねられます。また、キャラクターデザイナー天野喜孝氏の手掛けた魅力的な美形キャラクターは男性だけでなく女性にも人気が高く、女性向け同人誌が作られる等、同年に発売された任天堂の『ファイアーエムブレム 紋章の謎』と合わせて、女性ゲーマーが増えてきたのもこの辺りだと思います。

筆者は、本作が発売される約5ヶ月前に発売されたメガドライブの24MbitRPG『ファンタシースター千年紀の終わりに』(セガ)を愛好していたのですが、『FF VI』を初めて見た時は圧倒的なクオリティの差に愕然しました。『ファンタシースター千年紀の終わりに』はアニメ、『FF VI』は映画を意識して作られているので比べるものではないのですが、それを差し引いてもあのグラフィックのゲームが遊べるSFCユーザーが羨ましかったです。冒険的な成長システムを採用せず、従来のシリーズの様なキャラクターをカスタマイズする楽しみは半減されましたが、シリーズ初心者向けの「魅せるRPG 」としては正解だと思います。当時言われた「映画的なゲーム」という表現は決して大袈裟ではありませんでした。

個人的にもう一つ驚異に感じたのが11400円という定価の高さでありながらもダブルミリオンを達成したという事。メガドライブの『ファンタシースター千年紀の終わりに』が8800円だった事を考えるとあまりにも高額ですが、それが売れたという事実は、当時のゲーム業界はかなりのバブルだったんでしょうね。