コナミを代表するアクションゲームシリーズ『悪魔城ドラキュラ』の一つで、メガドライブオリジナルタイトルとしてメガドライブ末期に近い1994年に発売されました。
従来のドラキュラシリーズはドラキュラ城城内、或いはその付近を舞台としてましたが、本作ではヨーロッパ全土を舞台にしています(ちなみに一面マップ構成はファミコンディスク版初代とほぼ同じ)。その為か、タイトルにお馴染みの「ドラキュラ」「悪魔城」というキーワードを付けず、シリーズ初代の欧州MSX2版タイトルと同じ『VAMPIRE KILLER』が冠されています。
 
本作は性能が異なる二人のプレイヤーキャラがいるのが特徴で、ゲーム開始時にシリーズでお馴染みの鞭使いタイプの"モリス"か、槍使いの"エリック"のいずれかを選択します。特殊アクションも異なり、モリスは鞭をワイヤーのように天井に引っ掛けて移動する事が出来、エリックは槍を利用してハイジャンプする事が可能です。それらアクションを利用する事によって、選んだプレイヤーによってステージが分岐します。それぞれが進むルート、扱い易さから、エリック(槍使い)は初心者向け、モリス(鞭使い)は上級者向けと言ったところでしょうか。なお、通常ウェポン(鞭or槍)の他に、使用回数制限ありのサブウェポンがあったり、ジャンプ中の制御ができなかったり、ダメージを喰らうと後ろに吹き飛ばされるなど、基本はファミコン版シリーズ(悪魔城ドラキュラ、悪魔城伝説)を踏襲した作りとなっています。
難易度が高いと知られているシリーズですが、それまでのシリーズと比べると比較的難易度が低めで、パスワードコンティニューによる中断も可能です。よほどアクションゲームが苦手でない限り、ある程度の腕前を持っていれば、繰り返しプレイすればクリアーが見えてくるバランスです。

グラフィックは当時発売されていた他機種版より劣ると言われていましたが、メガドライブらしい発色が独自の世界観にマッチし、彩度が明るいスーパーファミコン版(悪魔城ドラキュラ、悪魔城ドラキュラXX)やアニメ調のPCエンジン版(悪魔城ドラキュラX 血の輪廻)よりもゴシックホラー感が上だと思います。メガドライブが苦手とされる赤系の色を多く使われているので、色の滲みが気になる人はテレビの色彩調整をするといいでしょう。ただ、キャラクターサイズがファミコン版シリーズのように小さめので、同時期のシリーズと比較すると見た目がしょぼく見えるのが難点です。
また、メガドライブ界で大活躍していたトレジャーに対抗してか、トレジャーが得意としていた多関節スプライトによる滑らかな動きを見せるボスキャラが本作でも多数登場するのが特徴で、それまでのシリーズのイメージに合うかはともかく、外伝として見るのであればこれはこれで見所のある演出と言えます。
FM音源が奏でるBGMの数々も、作品世界観にマッチした聴き応えがあるもので、他のドラキュラシリーズと肩を並べる程の名曲です(余談ですが、サントラCDPCエンジン版『悪魔城ドラキュラX』とのカップリングで発売されています)。

当時を知る者からすればそこまで悪い出来ではないのですが、発売当時、『BEEP!メガドライブ』(ソフトバンク)に掲載された読者による評価(ドッグレース)がやや低め(10点満点中6.5ポイント)だったので、その記事を読んで買い控えユーザーは多かったと思います。しかも、当時はトレジャー作品のような見た目が派手なゲームが出ていた中で、本作のようにストイックでキャラが小さく、見た目が地味なゲームは注目される訳もなく、受注が制限されるのも無理がありません。そのせいか一度も再販されず、出荷本数は少なかったので、当時ですら中古価格が下がらず、結局4980円で買ったと記憶しています。その頃筆者は高校生であり、お小遣いが月5000円だったので、正直高い買い物でした(これを買ってしまうと他の買い物ができなくなるという意味で)。
同時期に発売されたPCエンジン版『悪魔城ドラキュラX』は、ジャンプ制御のできる快適な操作性やバランス調整が万人向けであり、その路線は現在も引き継がれています。アクションRPG化され、アクションゲームが苦手な人でも楽しめる『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』以降のシリーズ
も悪くないのですが、ストイックなゲーム性の頃が好きだった筆者としては、頭の中にあるドラキャラ観とはかなり異なります。世間的な評価はとにかく、アクションゲームが次々と万人化していく中で、ストイックなアクションゲームに仕上げることが出来た幸運なゲームだったのかも知れません。

タイトルこそ"悪魔城ドラキュラ"の名が冠されていませんが、初代作をリアルタイムでプレイしている筆者としては、最近のシリーズ作よりもドラキュラらしい作品だと思います。あえて初期のファミコン版シリーズのテイストにしたのもメガドライブユーザーに合わせての事ですし、コナミだけにアクションゲームとしての完成度は水準以上ですし、音楽に至っては一流です。メガドライブ末期のソフトに見られたプログラミング技術は特に感じられず、ユーザーの間で圧倒的支持を受けていたトレジャー作品の陰に隠れてしまいましたが、時代性を気にしなければそれなりの佳作だと思います。

なお、北米版(Castlevania: Bloodlines)は国内版より難易度が上がっていますが、それ以外はほぼ国内版と同じです。当時の『BEEP!メガドライブ』のコナミのコメントによると、国内版はぬるく感じたら海外版をプレイする事を勧めていたので、興味があればこちらを手にしてもいいかと思います。一時期、秋葉原でかなりの本数が流通していたので、国内でも入手は比較的容易だと思います。むしろ真性のドラキュラファンは海外版を押さえるべきでしょうね(笑)。