1987年にアーケードで稼働したアイレムの名作シューティングの移植版で、このセガマークIII(マスターシステム)版の販売元はセガですが、開発は同機種で『アレスタ』を手掛けたコンパイルが担当しています。当時のセガの次世代機であるメガドライブ発売の一ヶ月前である198810月に発売されました。
元のアーケード版は、『グラディウス』(コナミ)や『ダライアス』(タイトー)等、80年代を代表する横スクロールシューティングの一つで、有機的なデザインの敵キャラや背景、強力な溜め撃ちショットの「波動砲」、オプション武器「フォース」を使った戦略性、巨大戦艦のみで構成されたダイナミックなステージなど、後のシューティングゲームに多大な影響を与えるほど、当時としては斬新な要素を多く盛り込まれていました。その人気は日本国内だけでなく、海外でも評価が高く、海外限定のハードに移植されるなど、他社の名作シューティングに匹敵するほど多機種に渡って移植されました。
 
このマークIII版は、大元はアーケード版に忠実ですが、基本性能がファミコンと大差がないセガマークIII(マスターシステム)ということもあり、一部のキャラクターが一回り小さく、ちょっとでも多くのキャラクターが表示されるとキャラが点滅(ちらつく)するなど、ハードスペック上仕方ない部分もあるのですが、可能な限りアーケード版の要素を表現されています。背景のグラフィックに関しては、二重スクロールはしないものの、アーケード版を似せようとする努力が感じられるほどの描き込み具合です。
また、当時のマークIII最大容量4メガビットを使用したことによって、先行して発売されたPCエンジン版では実現できなかった全8ステージ(2周目あり)収録だけではなく、マークIII版オリジナルの隠しステージまで用意されています。さらにFMサウンドユニットを装着したセガマークIIIか、マスターシステムで起動させると、サウンドをFM音源で楽しむことができます。
 
マークIII末期ソフトだけにゲームとしての完成度はかなり高いのですが、先行して発売されたPCエンジン版の移植度があまりにもの衝撃的だったので(それが例えステージ半分収録であっても)、後発のマークIII版はいくら出来がよくても初めてPCエンジン版を見た時の衝撃度には敵うはずがありません。また、当時の次世代機のメガドライブ発売が目前に控えていたため、非ユーザーの人にとっては存在すら気付かず消えていってしまった印象を受けます。そんな筆者もまた、マークIII版の存在を知らないファミコンユーザーの一人でした。
なお、筆者がこのゲームの存在を知ったのがかなり後年、1992年発売の『メガドライブFAN(徳間書店)付録のソフトカタログでした。筆者が中学2年生の昔の事なのであまり記憶がないのですが、その付録のメガアダプタに対応しているソフトの一覧をみて、「マークIIIにあのR-TYPEが出ていたなんてスゲェ」と妙な感動をした覚えがあります。当時、筆者にとっての『R-TYPE』はPCエンジン版の印象が強かったせいか、高性能のハードでしか遊べないというイメージで、ファミコンとそう性能が変わらないハードで『R-TYPE』が遊べるとは想像もできませんでした(今となってはネタに思われそうですが、その時は本気でそう思っていた)。一応、マークIII版はTVCMまで放映されていたようですが、その頃は完全にファミコン派だったのでチェックしておらず、マークIII版の存在を知ってから「マークIII版『R-TYPE』ってどんな出来なんだろう?」と興味を持った訳ですが、その頃すでに地元ではマークIIIソフトを扱っている店がないどころか、友達にマークIIIユーザーすらいなく、しばらくマークIII版は自分の中では幻のソフトとなってしまいました。それからさらに3年以上が経ち(1995年春)、筆者が高校3年生の時に初めて秋葉原に行き、そこでセガマークIIIソフトを取り扱っている店を見つけたのですが(ゼット。現メディアランド)、この時は残念ながら予算的にソフトを購入することができず、それから必死にバイトをしてその年の夏休みに念願のマークIII版を手に入れることができました。中古で4980円と今思えば高額でしたが、3年間も興味を持ち続けていたタイトルだけに当時の筆者にとっては安い買い物でした。
 
ほぼ完全移植といっていいほど完成度の高かったPCエンジン版の後発だけに、当時リアルタイムでマークIII版をプレイした人には賛否両論かと思いますが、リアルタイムではなく、すでにセガサターンが発売された時に初めてマークIII版をプレイした筆者にとっては、「ファミコンと同性能のハードでR-TYPEを再現した」という感動の方が大きく、セガマークIIIの名作シューティングの一つとして遊んでいました。流石に今遊ぶと流石にスプライトのチラツキは気になりますが、ゲームとしては普通に良い出来ですし、音楽をPSG音源とFM音源の両方で楽しめるので、移植度がより高い他機種版が出ている今でも音楽の聴きたさにプレイしている作品です。