ファミコンの比較的初期に当たる、1985年に任天堂より発売された、二人同時プレイ可能な縦スクロール型アクションゲームです。同年にはファミコン版の一部を変更したアーケード版(VSシステム)が稼働され、さらにその3年後にはアーケード版を基にしたファミコンディスクシステム版(書換専用ソフト)が発売されました。
 
プレイヤーはエスキモーのポポ(1P側)かナナ(2P側)を操り、ブロック状の氷の天井を木槌で砕きながら上へ昇っていき、界層分けされている雪山の頂上を目指します。ステージの途中には、アザラシや白クマ等がお邪魔キャラクターとしてプレイヤーに襲いかかり、それらを木槌を使って追い払うことができます。先のステージに進むと、お邪魔キャラクターだけでなく、ベルトコンベアや動く雲の足場(?)などの仕掛けが登場し、プレイヤーの行く手を阻みます。お邪魔キャラに触れたり、穴に落ちたりすると1ミスとなります。
通常のステージは8階層目で終了となり、そこから先はボーナスステージとなります。そこでは、時間制限内にボーナスアイテムである野菜を取りながら頂上を目指し、頂上に待つコンドルに捕まると山を制覇したことになり、ボーナスポイントが貰えます。このボーナスステージで時間内に目標を達成しなかったり、穴に落ちても1ミスとならず、そのまま先のステージに進むことができますが、その代わりボーナスポイントは貰えません。
ステージは全32面のループ制で、タイトル画面でステージセレクトが可能です。
 
二人同時プレイ時では、界層の上にいる側が上へ進むたびに上へスクロールしますが、下にいる側はスクロールアウトして画面外に置いてきぼりされると、その時点で1ミスとなるので、二人同時プレイをするときは息を合わせたプレイを心掛ける必要があります。意識して相手をミスさせることが出来ることから、初期の任天堂アクションゲームに見られた「協力プレイと対戦プレイが表裏一体になったゲーム性」がこのゲームでも健在となっています。メーカー側が遊び方を提示せず、プレイヤーなりの自由な遊び方を提供するという、その辺のサジ加減が任天堂らしい作りだと感じさせます。
シンプルながらも奥深いゲームシステムは今もなお名作と誉れが高く、後のディスク版だけでなく、ゲームボーイアドバンス(ファミコンミニシリーズ)やWiiのバーチャルコンソール版など多くの機種に移植され、ファミコン初期を代表する作品の一つと言えます。
 
当時、ファミコンではスポーツゲーム以外に対戦ゲームが少なく、友達の家でファミコンを遊ぶことが多かった筆者(当時小学低学年)にとっては、このソフトを対戦ソフトとして楽しんでいました。最初は協力し合いながら二人同時プレイを楽しんでいて、途中までは難易度が低いので問題はなかったのですが、途中からはそれが厳しくなり、知らずに相手をスクロールアウトさせたり、逆に相手に殺されたりするなど、まともに協力プレイができなくなってしまいました。そして、いつの間にか殺し合いの対戦ゲームと化していた…という例は筆者だけではなく、筆者の同世代の方は誰もが経験したのではないのでしょうか?
昔話だけに当時の記憶は薄いですが、翌年発売の『プロ野球ファミリースタジアム』(ナムコ)が登場するまで、本作を初め、初期の任天堂作品(『マリオブラザーズ』『バルーンファイト』など)はクラスメイトの間では対戦ツールの定番ソフトでした。
さらに後年、ニンテンドウ64で『大乱闘スマッシュブラザーズ』が発表された時に「対戦相手を画面外に吹っ飛ばすのが目的」と聞き、真っ先にこの『アイスクライマー』を思い浮かべたのですが、その続編(ゲームキューブ用ソフト『大乱闘スマッシュブラザーズDX』)では本当に『アイスクライマー』のキャラ(ポポ&ナナ)が参戦することを聞き、驚いた記憶があります。恐らく皆さん、思う事が一緒だったのかも知れません(笑)。
 
あまり知られていませんが、このソフトの後期再販版ではパッケージ上部に「FF」(ファミコンファミリー)のマークが付いたバージョンが存在します。ファミコン末期近くに発売されたと思われますが、その頃には多くの新作ソフトの陰に隠れてしまい、しかも当時は昔のゲームを振り返る風習もなかった為、誰にも知られないままひっそりと発売され、今となっては市場では出回りにくい一品となっています。筆者自身も実物をお目にかかったこともなく、コレクターズアイテムとしては極上レベルだと思います。