パステルカラーのグラフィック、コミカルなキャラクター、サンバミュージックで話題となった、セガの人気シューティングゲーム『ファンタジーゾーン』の正統な続編です。前作は元々アーケード作品でしたが、今回は家庭用オリジナル作品として1987年に発売されました。
任意型サイドビューシューティングであること、各ラウンドに設置してある前線基地の全てを破壊する目的、買い物によるパワーアップシステムなど、基本システムは前作から引き継がれています。本作はそれに加え、自機オパオパはライフ制を採用し、各ラウンドは複数のゾーンで構成され、それぞれのゾーンは各所に点在するワープを使ってそれぞれのゾーンに行き渡りすることができます。また、当時の家庭用作品らしく、一部のゾーンには隠しアイテム&ショップがあり、それを見つけることでゲームを有利にすることが可能です。
アーケード出身ではない家庭用オリジナル新作のため、アーケード版のファンには知名度が低いですが、後にアーケードへ逆移植されたり、ファミコン(サン電子)やMSX(ポニカ)に移植されるなど、ある一定の人気を博しました。
 
ゴールドカートリッジ初期に発売された前作マークIII版と比較し、本作は技術的にこなれてきた時期に発売されたこともあり、グラフィックの質はかなり向上し、スプライトキャラのチラツキは目立たず、前作マークIII版では再現できなかった前線基地のアニメーションが復活し、見映え的にも当時の家庭用作品でもトップクラスの出来となっています(同年10月に発売されたPCエンジンには流石に劣りますが…)。
また、前作マークIII版は発売時期の関係でFM音源に対応することができませんでしたが、今回は念願のFM音源に対応し、FM音源が奏でる綺麗な音色のBGMは今聴いても前作に劣らない名曲だと思います。
グラフィック向上の代償か、またはFM音源対応によるものか、処理落ちがやや目立ちますが、当時のハードスペックを考えれば許容範囲だと思います。
前作マークIII版は後発のファミコン版よりも移植度が劣りましたが、今回は元々マークIIIに特化して作られているので、ハード性能に比例するようにビジュアル面・サウンド面共に明らかにマークIII版が完成度が高いです。
 
見た目こそは前作マークIII版よりも格段にパワーアップしていますが、ゾーン間のワープ要素を加えたことによってラウンドクリアーに時間が掛かり、テンポが悪くなったのは賛否あるかと思います。本作は家でじっくり遊べる家庭用作品だけに、アーケード作品のように筐体の回転率を気にすることなく長く遊んでもらうためのアイディアだとは思いますが、前作はテンポの良さが売りだったので、アーケード派には批判が多いと思います。ただ、リアルタイムでプレイしていた筆者としては(但し、ファミコン版の方)テンポの悪さは気にならず、それどころかいつでもショップで買い物ができる親切設計で(前作はショップが限られたところでしか出現しなかった)、時間を掛ければクリアーが見えてくる温さが気に入りました。ただ、今回は一周エンドで、難易度調整の設定がなく、上級者には物足りない難易度ですが、他のセガマークIII作品が極端に難易度が高いことを考えれば、本作はセガとしては珍しい万人向け難易度だと思います。
敢えて気になる点を挙げるとすれば、初期のオパオパの初期スピードが極端に遅いことでしょうか。特にミス後の復活が辛く、速攻でアイテムショップに入ってエンジンを買わないと復活はかなり難しいです。少なくとも、どこのゾーンにアイテムショップがあるか覚える必要があります。また、今となっては素晴らしいBGMだけにサウンドテストが存在しないのも勿体なく感じます(当時はサウンドテストのあるゲームは皆無に等しいので仕方ないのですが…)。もっともこれは粗探しに近い意見で、筆者はこの難易度のぬるさとFM音源サウンドが好きで、マークIIIソフトとしては『アレスタ』と並び、かなりやり込んだゲームの一つです。今でもFM音源サウンドのためにたまに引っ張り出します。
 
同年に発売されたアーケード版は、セガマークIIIとほぼ同性能のSYSTEM E基板を採用しているので見た目はさほど変わりませんが、ライフ制が廃止されたり(一発死)、マークIII版にはなかった前線基地の位置を知らせるレーダーが画面上部に表示されたり、永久パターン防止のための制限時間が設けられてり、一部アイテムや隠しアイテムがなくなったり、処理速度がアップしたりと、全体的に難易度が上がっています。また、基板の仕様上、サウンドはPSG音源となっています。マークIII版を気に入りながらも難易度に満足しなかった人にはアーケード版がお勧めですが、このアーケード版はセキュリティの関係で基板に電池が搭載し、この電池の寿命が切れると稼働しなくなるので、ゲームを挑戦する前に稼働する基板を見つける方が難しいのかも知れません。
 
さらに後年、プレイステーション2用ソフトとして発売された『SEGA AGES 2500シリーズVol.33 ファンタジーゾーンコンプリートコレクション』には、本作のリメイク版(SYSTEM16版)が収録されましたが、ゲームとしては出来は申し分ないものの、アーケードゲーム的な作りを重視しているせいかテンポ自体はよくなっているのですが(オリジナルにあったゾーン間のワープがない)、あまりにもの変貌ぶりで、オリジナルのゲーム性を期待している人には賛否が分かれると思います。まあ、オリジナルのマークIII版も同時収録されているので、余程相性が合わない限り、買って損をすることはないのですが。