1987年にアーケードで稼働されたナムコの同名タイトルの移植で、当時としては珍しいドラゴンを自機としたファンタジーシューティングゲームです。PCエンジンのナムコット作品としては初期に当たる1988年に発売されました。アーケード版が稼働された1987年は、『R-TYPE』(アイレム)や『ダライアス』(タイトー)といった今でも語り継がれている名作シューティングが同年に稼働されましたが、それらに勝るとも劣らない完成度で、後に数多くの機種に移植されるほどの人気作でもあります。
 
本作は、上空や地上から出現する敵をそれぞれに対応したショットで撃ち分けながら進んで行くゼビウスタイプの縦スクロールシューティングで、アイテム取得によるパワーアップシステムや、ライフ制&残機制を採用しているのが特徴です。2タイプのショットの撃ち分けは同社の『ゼビウス』を彷彿し、パワーアップアイテムである青玉を取ると攻撃の幅が広くなる(首が最大3つまで増える)代わりに当たり判定が大きくなるという仕様は同社の『ギャラガ』を彷彿させる辺りに、ナムコシューティングの集大成的な作りであることを実感します。そのせいか、エンディングではそれまでナムコから発売されたゲームのタイトルが表示される演出があります(アーケード版はアーケードタイトルのみの表示で、PCエンジン版では家庭用のナムコット作品のみ)。
 
このPCエンジン版は、当時のHuカードの規格上最大で2メガビットの容量しか搭載できなかったので、スタート時の変身シーンの削除や、自機のアニメーションパターンの省略(左右の片向きのグラフィック)、そしてアーケード版では9つあったステージが7ステージに減らされていますが、無理矢理仕様をアーケード版に合わせなかったおかげで見た目のグラフィックの再現度が当時のアーケード移植物としてはなかなかの出来映えでした。流石にHuカード2枚組で発売された『R-TYPE III』ほどではないですが、それでも当時としては忠実な方だと思います。アーケード版で話題となった、凝った作りのドラマチックなエンディングも再現しているので、クリアーした時の達成感・充実感もアーケード版と同等です。BGMに関しては、元の音源に性能差があるので聴き比べれば貧弱に感じるものの、当時の移植物としてはなかなかの再現度だと思います。裏技のサウンドモードでじっくり聴けるのも嬉しいところです。
画面比率変更に伴うゲームバランスが再調整されているのも特徴です。アーケード版では首が2つ以上増えるまでは上空と地上を同時にショットすることができなかったのですが、PCエンジン版では最初から上空地上に同時にショットが撃てます。さらに、スピードアップアイテムの追加のおかげで体感的な難易度はかなり下がった印象です。初期のPCエンジンソフトがそうであったようにコンティニュー機能がありませんが、裏技で2回まで使用することができます。
 
PCエンジン中期以降に発売されたシューティングは、『ガンヘッド』タイプか、『究極タイガー』『TATSUJIN』などの東亜シュータイプ(ボンバー搭載系)といった派手なタイプのシューティングが数多く発売されたこともあり、本作はPCエンジンソフト全体として見れば地味ですが、ショットの撃ち分けシステムによる狙って撃つ楽しさを味わえるので、ゲームとしての面白さは見劣らないと思います。また、ステージ削除に関しても、良い方向で解釈すれば、手軽にプレイできる丁度良いボリュームになったと思えばこれでアリだと思います。難易度に関しても、バランス的に厳しかったアーケード版初期バージョンに比べればかなり万人向けに調整されたのも好印象です。ただ、裏技で縦長モードに切り替えることができ、実際こちらのモードの方が圧倒的に遊び易いのですが、タイトル画面で57回もリセットする必要があるのが難点です。効果音に関しても、破壊音が貧弱の為に撃ち込む感覚がないのが残念に思いましたが、アーケード版自体も音楽に注入させる為かそんな感じだったので、こればかりは仕方ないのかも知れません(続編PCエンジン版『ドラゴンセイバー』では大胆にも破壊音はオミットされている)。
 
当時、筆者はまだ小学生高学年ということもあり、アーケード版の存在を知らなく、テレビ東京で放映されたPCエンジン専門番組『大竹まことのただいまPCランド』を観て初めて『ドラゴンスピリット』の存在を知りました。その頃はまだファミコン最盛期だったこともあり、ファミコンでは再現できないグラフィックの鮮やかさ、特に自機の青の発色の綺麗さに、PCエンジンの性能の高さに感心した覚えがあります。アーケード版の存在も知らなかったこともあり、移植度に関しては関心がなく、ただ純粋にハイレベルなシューティングを家庭で遊べるPCエンジンは凄いと感じました。当時はPCエンジンユーザーではなかったので、PCエンジンユーザーだった友人宅に行って遊ばせて貰ったのですが、ゲーム内容に新しさを感じなかったものの(内容的にはパワーアップのある『ゼビウス』ですし)、やはり綺麗なグラフィックはかなりのインパクトでした。
ただ、PCエンジンとしては怪物ソフト(?)『R-TYPE』が先行して発売されていたので、それに比べればインパクトが弱く感じられましたが、それでもPCエンジン初期の普及に貢献したはずです。ほぼ完全移植のX68000版がPCエンジン版に先駆けて発売されましたが、あちらはフルセットで揃えると40万以上するハードなので、それと比較しハードが安価な(それでも24800円…)PCエンジン版はそれなりにニーズがあったはずです。
 
その翌年に発売されたファミコン版は、本作の主人公の息子が主人公という設定ですが、内容的には移植に近い作りとなっています。PCエンジン版と同じ容量を採用しながらも、PCエンジン版では削除された変身のデモシーンや、自機のアニメパターンが増加され、ファミコン音源で再現したBGMもなかなか味があります。どちらもシューティングゲームとしての出来がいいので、比較して見るのもなかなか面白いと思います。
 
余談ですが、『大竹まことのただいまPCランド』の番組内で、PCエンジンベストエンディングとして本作のエンディングが上位にランクインされたのですが、なんとエンディング画面が堂々と放映してしまったのは衝撃的でした(『ゲームセンターCX』が放映されるまで、ゲームのエンディングが放映されること自体がかなり珍しかった)。ネタバレとはいえ、この素晴らしいエンディングを知ったおかげでクリアー目標ができたので、結果的にはよかったのかも知れません。今思えば、ここまでドラマチックな演出があるシューティングは当時は他になかったと思います。