本作は、1990年に稼働されたカプコンのアーケード作品『戦場の狼II』をセガが海外マスターシステム向けに移植したもので、1991年に発売されたメガドライブ(GENESIS)版に合わせて発売されました。前作と同様、トップビューのコンバットアクションシューティングですが、アーケード版は5年の歳月を経ての続編ということもあり、今風(1990年当時)のゲームに仕上がっています。全7ステージ構成で、捕らわれ身の前大統領を救うのが目的です。
 
前作との大きな違いはプレイヤーのスペックで、今回は残機なしのライフ制(コンティニューなし)を採用し、道中に落ちているアイテムを取得することによって銃器を切り替えたり、パワーアップさせたり、ライフを回復させることができます。他にも同時期のカプコン作品ではお馴染みの、メガクラッシュ(画面中の敵を一掃するストック制ボンバー)が使えたり、道中に置いてある乗り物(ジープやホバークラフト)に乗る事が可能です。なお、アーケード版にあった3人同時プレイは不可で、メガドライブ版同様、一人プレイ専用です。
 
マスターシステムソフトとしては大容量4メガビットを使用しているせいか(参考までにメガドライブ版8メガビット)、マップ構成は若干省略されている部分があるものの、可能な限り再現し、ボスはマスターシステムが得意としたBG処理で再現しているので、多少無理矢理感があるもののハード性能を考慮すればよく出来ています。細かいところですが、敵を武器の一つである「バーナー」で焼きつくすと燃え上がる演出も再現しています。また、アーケード版ではライフ制にも関わらず一発死トラップがありましたが、本作はコンティニューがないせいか、ダメージ制トラップに変更されています。
 
マスターシステムソフトとしては及第点ですが、スペック的な問題上仕方ないとはいえ、アーケード版はおろか、同時期に発売されたメガドライブ版と比較するとかなり辛い出来です。特にメガドライブ版の場合、グラフィックが若干劣るのと三人同時プレイが出来ない以外は(当時としては)水準レベルの移植度ですが、その代わりオリジナルモードが秀逸の出来で、アーケード版とは違った魅力がありました。しかし、マスターシステム版は独自のアレンジがなく、移植度とは関係なしに単体で見たとしても、かなり地味な仕上がりになっています。マスターシステムにとっては厳しい処理をしているのか、動きが全体ガクガクしている(30fps以下?)こともあり操作性が悪く、ショットの連射性能は低く(おかげで当てにくい)、シューティングゲームならではの爽快感が半減されています。また、容量的な問題もあったのか、ゲーム中ではBGMはほとんど流れず(唯一ボス戦直前に流れますが、それもイントロ部分のみ)、エンディングは一枚絵で「THE END」の文字だけで終了なのはかなり寂しいです(ちなみにエンディングの曲はアーケード版1面のアレンジ)。他にも、アーケード版やメガドライブ版では次々と敵が出現しますが、それらハードに比べ、スプライト能力が劣るマスターシステム版では多くの敵を同時に表示させることができず、敵の配置で難易度を高くできない代わりにステージ内の制限時間を短くすることによってバランスが取られていますが、この制限時間が癖モノで、中盤ステージ以降はある程度敵を無視し効率よく最短ルートで進まないと時間内クリアーは難しいほどシビアな設定となっています。MSX2の『メタルギア』(コナミ)は敵をたくさん表示できないのを逆手に取りステルスアクションとして仕上げましたが、こちらは制限時間でゲーム全体のバランスを取っているのが面白いところです。筆者の場合、可能な限り敵を無視し、最短ルートでボスに向かい、ボス戦ではメガクラッシュ連発で何とかクリアーすることができました。筆者の腕の悪さを考慮しても、この時間制限はあまりにも厳しいです。
 
筆者はこのマスターシステム版をメガドライブ版発売からかなり後になってから遊んだので(しかもドリームキャスト時代)、古臭いと思ったのは仕方ないことなのですが、もしこれをリアルタイムでプレイしたとしてもやはり厳しく感じたと思います。マスターシステムのカプコン移植物として見ても、本作の前に発売されたマスターシステム版『Ghouls'n Ghosts大魔界村)』や『Forgotten Worlds(フォゴットンワールズ)』は独自のアレンジでそれなりに楽しめたのですが、こちらは出来る限りアーケード版に近づけて移植した結果、単なるタイニー移植で終わった感があります。ハードスペック的に無理なら、そのハードの特性を活かしたアレンジをして欲しかったところですが、そうなってしまうと『MERCS(戦場の狼II)』である必要性がなくなってしまうので、そのアレンジ加減が難しいところでしょうが…。それでも、本作以上に無理のある移植度を誇るマスターシステム版『Strider(ストライダー飛竜)』『Street Fighter II’』に比べれば遥かに楽しめましたが…(笑)