本作は1989年にアーケードで稼働した東亜プランの同タイトルをその翌年1990年にメガドライブへ移植されたもので、同社のメガドライブ参入第一弾ソフトでもあります。
ジャンルは同社が得意する縦スクロールシューティングで、レバー操作とショット&ボンバーボタンのみのオーソドックスなゲームシステムは『飛翔鮫』『究極タイガー』など、同社が手掛けたフライングタイガーシリーズの流れを組むものとなっています。
 
基本となるシステムはアーケード版もメガドライブ版も同じで、3種類あるショットをショットアイテムを取ることによって切り替えることができ、パワーアップアイテムを3つ貯めることによってショットのレベルが一段階上がります。また、東亜プランシューティングではお馴染みの、画面内の敵機や敵弾を一掃するストック制のボンバーは、ボンバーボタンを押す長さによって爆風位置を調整することができます。
当時のシューティングゲーム同様、ミスするとショットのパワーアップが初期化され、復活位置もある程度戻されるので、近年のその場復活を採用したシューティングゲームのような残機潰しによる攻略が効かず、ガチな攻略が求められる硬派な仕上がりとなっています。
 
東亜プランが制作したメガドライブソフトとしては第一弾にあたる『TATSUJIN』(販売はセガ)では、見た目はよく出来ているものの、一部のショットがアレンジされたり、BGMの再現性がイマイチだったり、画面の比率の関係でアーケード版よりも難易度が高かったりと、メガドライブ初期タイトルとしてはそれなりに受け入れられたものの原作のファンからの評価は賛否両論でした(個人的にはアーケード版からさほど間を置かずに旬のうちに移植された点は評価できます)。
 
第二弾にあたる『大旋風』(こちらの販売もセガ)は、自機のショットが連射できない以外の移植度はそれなりですが(もっともシューティングゲームにおいて連射が効かないのは致命的ですが…)、元の作品が地味すぎたせいかあまり注目されることがありませんでした。
 
第三弾にあたる今回の『鮫!鮫!鮫!』では、メガドライブでの開発環境に慣れたせいか、グラフィックは一部省略があるものの当時のアーケード移植物としては水準以上ですし、BGMの再現性はサントラCDを所有している筆者の実感としてはなかなかよく出来ています。ステージ開始時・終了時に挿入されるちょっとしたパフォーマンスもきちんと再現されたり、ステージ数はアーケード版同様10面収録で、前作・前々作の『TATSUJIN』『大旋風』と同じ4メガビット使用でありながらアーケード版にあった要素はほぼ収録されているのは見事です。
ただ、画面比率の関係上、このメガドライブ版はアーケード版よりも縦の解像度が低いためバランスが再調整され、一部のパターンが再現されずアーケード版の攻略方法は使えませんが、単体としてみればかなり遊び易くなっています。また、アーケード版ではかなり早かった敵弾が、難易度イージー(ちなみにデフォルトの難易度はイージーモード)ならば低速になるので、弾幕系シューティングから始めたようなシューター、もしくは高速弾シューティングが苦手な人でも、落ち着いて弾避けが楽しめます。中盤以降では後方から出現する敵機に泣かされますが、それでも極悪な難易度だったアーケード版よりも低く、ゲームシステムがオーソドックスなので、PCエンジン版『究極タイガー』同様、シューティング入門用として最適の完成度を誇ります。
イージーモードでは物足りない上級者でも、ハードモードならアーケード版同様の高速弾シューティングとして楽しめ、難易度別にエンディングが用意されているので、非常に挑戦し甲斐のある難易度だと思います。
敢えて不満を挙げるとしたら、アーケード版がそうであったように、パワーアップアイテムを3つ集めないとショットが強化しないシステムのせいで、パワーアップに時間が掛かるのが難点です(それでも、パワーアップアイテムを5つ集める必要のあるTATSUJINに比べれば大分マシですが…)。
 
アーケード版が稼働された当時、筆者は小学6年生でしたが、その頃はゲームセンターに通うことがなかったので、アーケード版の存在を知ったのがメガドライブ版発売以降でした。このメガドライブ版も、発売された当時はハードを所有していなかったので、購入はソフト発売から約2年で、中古1200円ぐらいで購入しました。記憶が不確かですが、『BEEP!メガドライブ』(ソフトバンク)の読者レースでの評価をみてチェックしていたんだと思います。或いは、当時ハマっていたアーケード版の『雷電』(セイブ開発)の影響で、メガドライブ移植版の『雷電伝説』(マイクロネット)を買おうと思ったらソフトがまだ高額で、安く売っていた本作を買ったのが理由かも知れません。どちらにせよ、東亜プランタイプのシューティングをやりたかったのは確かです。
内容に関しては、専門誌での評判の通りの出来で、ゲームバランス、敵を倒した時の爽快感は申し分なく、特に豪快でド派手な最強状態のファイアーの気持良さは格別で、それが本作ならではの魅力だと思います。前作、前々作にあたる『TATSUJIN』『大旋風』ほどではないにしろ、比較的多くの本数が中古市場に流通しているので、それだけ多くのユーザーに行き渡った証拠でしょう。メガドライブユーザーにとって正に定番シューティングの一本だと思います。
 
最終的には『雷電伝説』も購入し、実際にプレイして面白かったものの、効果音の貧弱さや、ミサイルの弱体化、無茶すぎるメガドライブ版オリジナルステージの難易度から(これはこれで挑戦し甲斐がありますが)、むしろ先行して購入した『鮫!鮫!鮫!』の方がお気に入りだったりします。
 
このメガドライブ版の数年後にオリジナルであるアーケード版をプレイしたのですが、敵が放つ弾が異様に速く、一面すらクリアーできないほどの高難易度で(個人的には同社の『達人王』と双璧)、その時初めてメガドライブ版が万人向けに調整されたゲームであることを知りました。本作や、後に発売された同社のメガドライブ版『ゼロウィング』の調整を見て、ハードシューター以外には受け付けられなかったアーケード版からの反省点のように感じられました。
現在2Dタイプのシューティングはほとんどマニアしかプレイしないので、32ビット機(セガサターン&プレイステーション)以降の家庭用移植版はアーケード版の完全移植が主流となっていますが(アレンジモードが追加されてもそのほとんどがマニア仕様)、本作のように移植に際し、初心者でも楽しめる調整は当時これが普通でした。メガドライブ版が発売された数年後は『ストリートファイターII』(カプコン)人気による対戦格闘ゲームブームの影響もあり、シューティング人気が下火となりましたが、それでもシューティングゲーム初心者向けに調整されたゲームがそれなりに評価された事実は、その頃はまだシューティングゲームは幅広い層に受け入れられたことを実感します。
 
余談ですが、東亜プラン作品としては唯一TVCMが作られたタイトルでもあります。かなり色モノな作りだったようですが、放映回数が少なかったせいか、残念ながら実際に観ることができませんでした。TVCMの内容については『BEEP!メガドライブ』の『CM探偵団』のコーナーに掲載されましたが、CM制作裏話によると、設定上では魚市場となっていますが、実際は野菜市場を借りきり発砲スチロールと水をばらまいて撮影されたようです。
 
そういえば、『メガドライブFAN』(徳間書店)の読者ページで、本作の批判の一つに「パッケージイラストのパイロットの目つきが嫌らしいから駄目だ」みたいな内容が掲載されていたのですが、ゲームとは全く関係ないところまでチェックを入れるメガドライブユーザーの目は相当厳しいと感じました(笑)