本作はスクウェア・DOGブランドより1987年にファミコンディスクシステム用として発売された3Dタイプのアクションゲームで、アップルII界の天才プログラマーナーシャ・ジベリ氏がファミコンソフトとしては初めて開発に関わったタイトルでもあります。
特殊処理による立体映像が特徴で、ソフトに付属する赤青の3Dメガネ「とびだせメガネ」を使用すると画面が立体的に見えるモードに切り替えることができます(ゲーム中ならセレクトボタンを押せばどこでも切り替えが可能。勿論、ソフト単体でも問題なく遊べる)。
なお、ゲーム性は変わらないものの、グラフィックがシリアス調に、ゲームスピードがより高速化された続編『JJ』が同年12月に発売されています。
 
ジャンルはひたすら画面奥方向に向かって走っていくタイプのステージクリアー式3Dアクションゲームで、柱にぶつかって出現するアイテムを取ったり、敵を避けたり、穴を飛び越えながら画面の奥に向かっていき、ステージ最後に待ち受けるボスを倒すとステージクリアーとなります。
8ステージ構成で、ひとつのステージは4つに分かれ、エンディング後に表示されるコマンドをタイトル画面で入力することによってゲームスピードがアップした裏面をプレイすることができます。
 
見た目がセガの3Dシューティングゲーム『スペースハリアー』にそっくりですが、本作の主人公はボス戦以外、宙に浮かぶことも、ショットを撃つことができず、初期状態では走るかジャンプ以外のアクションはできません。ショット(本作の呼び名はミサイル)は柱にぶつかった時に出現するアイテムを取る事で可能ですが(ボス戦はアイテムなしでショットが可能)、ショットは単発ということもあり敵を撃ち落とす爽快感は低めで、ジャンプでマップを乗り越えていくステージ構成だけにジャンプアクションの色合いが強いです。
道中のところどころに開いている穴は、広さによっては大ジャンプや、スプリング台(本作の呼び名は“ジャンパー”“スーパージャンパー”)を利用したり、柱の上を足場に使わなければ乗り越えられない箇所があります。ただ適当にジャンプしているだけではジャンプ力が足りなかったり、逆に穴が狭いところで大ジャンプして次の穴に落ちてしまうことがあるので、ステージマップをある程度覚える必要があります。しかも、先のマップが見えにくい3D視点なので、アドリブで越えるのはかなり厳しいです。
ボス戦では、プレイヤーが自由に宙を浮かんだり、ショットを撃つことができるので、それこそ『スペースハリアー』のようなゲーム性に切り替わります。ショットはある程度敵に向かってホーミングし、各ステージのボスキャラクターは『スペースハリアー』に登場するドラゴンのように多関節スプライトで表現されているので、スタッフが明らかに『スペースハリアー』を意識して作られたかわかります(しかし、ボス戦で飛べるなら道中でも飛べたらと、誰もが思うでしょう)。
 
ファミコン中期のタイトルとしてはプログラムの技術力は高く、中でもプレイヤーの動きに合わせてタイル状のフィールドが左右に滑らかにラスタースクロールするのは見ていて気持ちいいです。前年に発売されたセガマークIII版『スペースハリアー』のフィールドはただの垂れ流しだったので、この滑らかなラスタースクロールを家庭用のゲーム機で再現されたことに衝撃を受けた記憶があります。
また、ファミコンにはスプライトを拡大させる機能がないので、グラフィックパターンを一つ一つ描いていますが、滑らかに迫ってくる(ように見える)柱や敵の疑似的な拡大処理もなかなかで、位置関係もわかりやすいです。
なお作曲担当は植松伸夫氏で、音楽は曲数が少ないものの、同氏の代表作であるファイナルファンタジーシリーズとは違ったカラーの軽快な音楽はコミカルな作品世界観にマッチし、ノリもなかなかです。メイン曲は一つしかありませんが、プレイしていて口ずさむほどの名曲です。
ただ、肝心のとびだせメガネを使用した時の立体映像が、人によってはチカチカするので(右目用のグラフィックと、左目用のグラフィックが交互に高速に切り替わるため)、長時間のプレイには向きません。とびだせメガネ対応ソフトが他には同社の『ハイウェイスター』しかなかったことを考えると、実験色が強かったデバイスのように感じます(そのせいか続編『JJ』には非対応)。しかし、立体映像をオフでプレイしてもゲーム性に響かないので、あくまで立体映像はオマケとして捉えても問題はありません。
 
難易度に関しては、コンティニューが標準で搭載されているとはいえ、クリアーには上級テクニックが必須なところもあるので、それなりにアクションゲームに慣れている人でも難しく感じるはずです。中でも、後半ステージになると、巨大な穴を柱の上を連続して乗り移って飛び越えなければならない箇所があるのですが、3D視点だけに人によっては柱の座標が見た目ではわかりにくいので、3Dタイプのゲームが弱い人にはかなりの壁になります。当時、テレビ東京で放映されたファミコン専門番組『ファミっ子大作戦』内のコーナーの一つである『橋本名人のハイテク道場』で該当部分の攻略方法が紹介されたのですが、この「柱にぶつかって距離を保つ」というテクニックを観ていなければ、筆者はここで間違いなく投げ出していました。
 
実は、今回の記事を書くにあたってほぼ同一内容の北米版をプレイしました。北米ではディスクシステムが発売されなかったので、メディアがロムカートリッジで、タイトルが『3-D Worldrunner』に変更され、販売元がアクレイムとなっていますが、音源や難易度、3Dモードの切り替え、ゲームオーバー後に第二のタイトル画面に戻される仕様は国内版と同じです。現在、完動品の本体やディスクを入手するのはかなり困難なので、どうしてもプレイしたい方はこちらを手にするのも手だと思います。
 
前述した『ファミっ子大作戦』の『橋本名人のハイテク道場』ですが、これはバンダイ(当時)の橋本名人が自社・他社を問わずファミコンソフトの攻略法を伝授するコーナーなのですが、それを見て当時の筆者は子供ながらも「何でバンダイのゲームじゃないのに他のメーカーのゲームを攻略するんだろう?」と疑問に思っていました。ただ、橋本名人は後年スクウェア(現スクウェア・エニックス)に移籍することになるので、単なる偶然とはいえ、橋本名人とスクウェアとの付き合いはこの頃からあったことになります(余談ですが、同コナーで『ドラゴンクエストIII』のピラミッドの攻略法を紹介したこともあったので、エニックスとの付き合いもこの頃からあったりします)