1992年に稼働されたカプコンの同名アーケード作品の移植で、アーケード版が稼働から一年三ヶ月後の19936月にPCエンジン版がNECより発売されました。
本作は、同社の代表する対戦格闘ゲーム『ストリートファイターII』のアッパーバージョンで、やや大味だった前作の対戦バランスを再調整し、同キャラ対戦が可能になったり、CPU専用キャラであった四天王が使用可能となったりと、対戦格闘ツールとしてより強化された内容となりました。
 
このPCエンジン版は、より多くのユーザーにプレイして欲しいためか、CDロムメディアではなく20メガビットのHuカードでのリリースとなり、販売元こそはNECですが、開発元がカプコンということもあり、キャラクターサイズや、インターフェイス周りなど、スーパーファミコン版『ストリートファイターII』をベースに改良された作りとなっています(オープニングアニメやピンチ時のBGMはスーパーファミコン版と同様に削除された)。
ベースとなったスーパーファミコン版『ストリートファイターII』よりも4メガ増量ということもあって、アーケード版『ダッシュ』の要素の追加だけでなく、音声の増量や、削除された樽ステージが復活されています。
 
スーパーファミコン版同様、容量関係でキャラクターパターンに多少の省略はあるものの、キャラクターの動きや、それに伴う操作性など、プレイ感覚に違和感がありません。
また、PCエンジンのハード的な問題で2重スクロールがなかったり(地面のラスタースクロールは再現されている)、音源が貧弱ですが、その代わり当時としては音声がそこそこクリアで(メガドライブ版よりも確実に上)、PCエンジンらしいシャープな質感のグラフィックが美しく(ジャギーが目立ちますが)、PCエンジンであることを考えると及第点以上の仕上がりです。過去にカプコンはPCエンジンで『サイドアーム』や『ソンソンII』等を手掛けたこともあり(発売元はいずれもNECアベニュー)、移植物には手慣れている感があります。
当時のアーケード移植物としては水準以上の仕上がりですが、それ以上にPCエンジンとしては初めて完成度の高い対戦格闘ゲームとして発売されたので(一応初代が『ファイティングストリート』として発売されていますが、対人戦はおまけ程度の扱いだった)、アーケード版のファンのみならず、対戦格闘ゲームに興味を持ったユーザーにも話題性十分でした。
 
操作性の面では、元のアーケード版はパンチとキックに強・中・弱のそれぞれ3ボタン、計6ボタンに割り与えていましたが、PCエンジンには元々2つのボタンしかないので(セレクト、ランボタンを含めても4ボタン)、本作の為に6ボタンに対応したアベニューパッド6NECアベニューから発売されました。このパッド、3980円と高価な上、持ちにくく、それぞれのボタンがやや離れているので、使いにくいのが難点でした。同時期にHORIから発売されたファイティングコマンダーは、2980円とやや安価で、形状がスーパーファミコンのコントローラに似ているので持ちやすく、連射機能が充実しているので、むしろこちらの方を愛用していました。
なお、通常の2ボタンパッドでプレイすると、ランボタン・1ボタン・2ボタンがそれぞれ強・中・弱の攻撃ボタンに割り与えられ、セレクトボタンでパンチ・キックの切り替えになるのですが、その特殊な操作方法から、ハンデ戦にも使えるのがスーパーファミコン版にはない利点だと思います。
 
個人的に頑張ったな、と思ったのがソフトの価格。今からみれば9800円は高額設定ですが(参考までに1990年に発売されたPCエンジンスーパーグラフィックスの『大魔界村』は8メガビットで10800円)、大容量のシステムカードである『アーケードカードDuo』『アーケードカードPro』の価格が一万を軽く上回ったことを考えると、利益よりも本体普及の起爆剤として戦略的な価格設定をしたのではないかと思ったりします(記憶が不確かですが、NECの広報の人が専門誌で赤字の価格設定と言っていた気がする)。
しかし、本作を十分に楽しむには別売りの6ボタンパッドは必須で、さらに対人戦するにはマルチタップと2個の6ボタンパッドが必要なので、全て定価で購入すると2万近く掛かります(3割引きでも15000円ぐらい)。それでもHuカード作品としてはかなり売れたので、どれだけユーザーが待望したソフトだったかを伺えます。
ただ、本作の翌月には、本作の要素に加え、当時の最新作だった『ストリートファイターIIダッシュターボ』の要素を加えたスーパーファミコン版『ストリートファイターIIターボ』が発売されたので、悔しい思いをしたPCエンジンユーザーは多かったと思います。まさに一ヶ月天下でした。
他にも、当時はすでにアーケードで『ストリートファイターIIダッシュターボ』が稼働されていたのも痛かったです。
 
筆者の場合、本作をワゴンで買ったので、安価で手に入るお手軽な対戦格闘ゲームとして遊んでいました。先述した通り、すでに『ストリートファイターIIダッシュターボ』が稼働されていたので一部の対戦格闘ゲーマーはダッシュのスピードが鈍いとの声がありましたが、個人的にはダッシュターボのスピードについていけなかったので、むしろダッシュの内容で満足していました(事実、ターボのスピードについていけなかった人は多かったようで、一部のゲーマーはネオジオの対戦格闘に流れつつあった)。
人気作だけに当時多くの機種に移植され、その機種ごとに一長一短ですが(マスターシステム版は問題外…)、グラフィックに関してはシャープな質感のPCエンジン版が気に入っています。あくまでダッシュの移植なので、ハメ技が多いという難点がありますが、コンボ重視の近年の対戦格闘ゲームよりも作りがシンプルなので、オーソドックスながらも完成された面白さがあります。
 
ところで、早期購入者には春麗ファンブック(ケースに入るようなコンパクトサイズ)とミニうちわが貰えるキャンペーンが行われましたが、実際にもらった人はどれだけいるのでしょうか?過去10年以上秋葉原に通っていながらも中古で見掛けたのがたった一回しかありません。値段が付くとは思えませんが、今では手に入りにくい一品であることには違いがありません。
 
余談ですが、当時放映された本作のTVCMは、ベガがダブルニーハメで春麗を圧倒するという内容でした。公式でハメ技をTVCMとして放映するなんて、当時はどうかと思いました(メーカーがハメ技を認めているようなもの)