本作は1988年に稼働したアイレムのアーケードゲーム『イメージファイト』の移植版で、このPCエンジン版はHuカードメディアとして同社より1990年に発売されました。
ジャンルは縦スクロールシューティングゲームで、アーケード版は同社の名作横スクロールシューティング『R-TYPE』のスタッフが手掛けたことで知られています。
 
操作はショットボタンとスピード変速ボタンの2ボタン+8方向レバーのみで、シューティングゲームとしては比較的シンプルなものですが、R-TYPEのスタッフが製作したという触れ込みだけに、縦スクロールシューティングとしては珍しい当たり判定のある地形、自機の周りをサポートする攻撃補助ユニット「ポッド」の存在など、R-TYPE同様、撃って避けるだけではなく、パターン性や戦略性の高い内容となっています。
 
システムの中でも特に特徴的なのは攻撃補助ユニット「ポッド」で、アイテムボックスから出現するポッドを取ることによって自機の周りに最大3つ装備することができ(左・右・後方)、ショットボタンを押すことによって通常ショットと同威力のショットをポッドから発射することができます。そしてこのポッドは2種類あり、青色は前方固定で、赤色はレバーの入力方向と逆の方向にショットを撃つことができ、前方以外から出現する敵を対処することが可能となっています。
また、ポッドを飛ばすことができたり(ポッドシュート)、ポッドを敵に接触させてダメージを与えることができ、ポッドを使いこなすことが攻略の鍵となります。
アイテムボックスにはポッドの他にも、機首に取り付けられる9つのパーツがあり、装着させることによってパーツ別に異なるショットを発射したり、パーツ自身に耐久力があるのでちょっとしたシールド代わりにもなります。
 
他にも、当時のシューティングゲームとしては珍しく、自機の移動スピードを4段階に任意で変速することができますが、それだけでなく、変速時には自機の後方から攻撃判定のあるバックファイアーを発射することができ、それを利用して敵にダメージを与えることができます。
この「スピード変速」や「バックファイアー」の2つの要素は、後の90年代シューティングゲームに多少なりとも影響を与え、特にハドソンのシューティングキャラバンシリーズではどちらの要素を取り入れるなど、本作の影響をかなり受けていることが伺えます。
このシステムは特に自機の装備が貧弱なミス後の復活時に便利で、不利な状況でも紙一重で切り抜けることも可能となっています。
 
ステージ終了後のリザルト画面には敵機の撃破率が表示されますが、前半5面の撃破率の平均が90%を下回るとペナルティとして補修ステージに飛ばされてしまいます。ひたすら難易度が高く、いかにペナルティを受けずにゲームを進めるかがクリアーへの鍵となります。
 
気になるPCエンジン版の出来ですが、容量の関係で一部の背景が簡略されていたり、画面比率の関係でバランスが再調整されていますが、『イメージファイト』としてのゲーム性はきちんと再現されています。アーケード版にあった安全地帯は、画面比率の関係で再現されていませんが、場所を変えて健在です。
PCエンジン初期の名作『R-TYPE』(販売元ハドソン)に比べると流石に移植度は劣りますが、当時の家庭用ハードの性能を考えると十分に及第点です。これ以上の移植度を求めるとなると、当時はフルセットで40万以上もするX68000(シャープのパソコン)ぐらいしかありませんでしたが、24800円(初期PCエンジン、コアグラフィックス)のハードでこれだけのものができれば文句はないはずです。むしろ、横画面の家庭用テレビで遊ぶことを前提とすれば、後発のセガサターン&プレイステーション版よりも遥かに遊び易いです(アーケード版と同じパターンにしてしまったため、横画面モードでは画面外から敵が弾を撃ってくるのが原因)。
 
アーケード版は高難易度シューティングとして知られていますが、PCエンジン版ではスタート時に3種類から難易度が選べ、しかもコンティニュー回数は無限なので、パターン性の高いこのゲームにおいて繰り返し再挑戦できる作りは、アーケード版に興味がありながらも高難易度で手を出せなかったユーザーには嬉しい限りです。
また、全体的に敵が硬いのですが、アーケード版やファミコン版は異なり、このPCエンジン版ではオート連射がデフォルトで搭載されているので、コントロールパッドでの操作も苦痛ではありません。アーケード版と同様に単発設定も可能ですが、連射があるのとないのとではえらく難易度が変わるので、単発設定は上級者向けと言えます。
余談ですが、アーケード版は流石に手動連射は厳しいと思ったのか、ゲームセンター側がそれを考慮して、筐体をオート連射設定にしている店を多く見かけました。同時期に稼働された東亜プランの『TATSUJIN』と合わせて、手動連射から自動連射へと切り替わった変換期のシューティングゲームとも言えます(奇しくも、ちょうどこの時期は16連射で有名な高橋名人がメディアでの登場回数が減っていった)。
 
当時は同名ファミコン版と同時期発売を目指して開発されましたが(ファミコン版は19903月発売)、開発は遅れに遅れ、同年の7月に発売されました。
アーケード版はR-TYPEのスタッフが関わったというのもあり、マニアの間で知名度があったので期待されたソフトではあったのですが、ちょうどその頃、当時の話題作『スーパースターソルジャー』(ハドソン)が発売されてしまいタイミングを逃した感があります。
それが理由かわかりませんが、当時は目立ったセールスにならず、私の地元では発売から半年も経たずにファミコン版と一緒に新品で1480円で並んでいる姿をディスカウントストア(今は亡きダイクマ矢部店)で見かけました。
TVCM(それがファミコン版だったかPCエンジン版だったか失念)での「R-TYPEのスタッフが手掛けた」という触れ込みに興味を持っていましたが、当時の私はPCエンジンを持っていなかったので仕方なしにファミコン版を買い、PCエンジン版の方はPCエンジンユーザーであった友人に買わせ、友人の家に遊びに行くたびに遊んでいました。
その頃はまだPCエンジンの性能に免疫がなかったので、「これだけのクオリティのゲームがたった1480円で買えるのか!」という衝撃を受け、アーケードレベルの作品が安価で手に入るPCエンジンユーザーが羨ましく感じました(それどころかファミコン版との格差に、敢えてファミコン版を購入してしまった行為に凹んでしまったw)。
結局PCエンジン版を買ったのがかなり後で、1996年春に秋葉原のラオックスで新品500円ぐらいで購入しましたが、その頃には興味が薄れてしまい、あまりプレイすることはありませんでした(笑)。
 
90年代後半からの縦スクロールシューティングは、『怒首領蜂』(アトラス/ケイブ)から始まったアドリブ重視の弾幕系が主流となり、本作のようなパターン重視の縦スクロールシューティングは希少になりつつあります(数少ない例がトレジャーの『レイディアントシルバーガン』『斑鳩』)。パターン重視のゲームは覚えなければ納得しないミスが多いですが、その代わり、繰り返し遊べば下手な人でもそれなりに先に進められるバランスがパターン重視のゲームの魅力だと思います。
 
そういった意味で、今となっては手軽にパターンを組み立てる楽しさを味わえるシューティングとして価値のある作品だと思います。読み込みもないHuカードメディアという手頃さも手伝って、お気に入りの一本でもあります。