後に多機種に渡って展開されることになる、コンパイルを代表する縦スクロールシューティングシリーズ『アレスタ』の記念すべく一作目で、マスターシステム末期である1988年にセガより発売されました(なお、本作の発売数ヶ月後には、オープニングデモやステージ等が追加されたMSX2版が自社ブランドで発売されました)。
基本システムやゲームの流れは同社開発のファミコンディスクシステム&MSX作品『ザナック』(ポニーキャニオン)を踏襲し、自機は無制限に自動連射ができるメインショットと、それぞれ性能が異なる8種類のサブウェポンが使え、プレイ内容に応じて難易度が自動的に調整されるのが特徴です。勿論、コンパイルシューティングではお馴染みの高速スクロールも健在です。
メインショットはパワーアップチップを取り続ける事でパワーアップし、サブウェポンは同じ番号のウェポンアイテムを取り続けるとパワーアップします。サブウェポンは『ザナック』にもあった弾数無制限のオールレンジタイプの他に、低速の誘導弾、レーザー、ウェーブ弾、前方バリアなど、使い分ける楽しさがある特徴的な性能となっています。
他のコンパイルシューティング同様、エクステンド(スコアによる自機の1UP)が早く、エンディングに到着する頃には数十機単位で増殖します。ただ、ミスすると自機のパワーアップが初期状態に戻ってしまうので、ショットのパワー不足による復帰後の立て直しが難しく(復活地点がその場なので尚更)、慣れないと復活に数機を無駄にしてしまうので、過剰なエクステンドでも、ある意味バランスは取れていると思います。
マスターシステム末期に発売された為、BGMに通常のPSG音源の他に、FM音源版が収録されています。ただ、FM音源は本体に負担が掛かるのか、ただでさえPSG音源再生でも処理落ちするのに、FM音源再生では余計に処理が重くなります。慣れればさほど気にはならないのですが、これにはメーカー側も気にしたのか、マスターシステムでプレイしていても(マスターシステムで起動させた場合、強制的にFM音源モードになる)裏技で音源を切り替えることができます。
内容が『ザナック』に似ている事もあり、本作はよく『ザナック』と比較され、『ザナック』の方を評価する人が多いですが、筆者的には『アレスタ』の方が気に入っています。
『ザナック』はあれだけの敵弾を表示させながら処理スピードを維持し、さらにスプライトキャラクターのチラツキも抑えた、当時のプログラム技術の水準を上回ったソフトでした。しかも、それがセガマークIIIよりもハード性能が劣るファミコンで発売されたのですから、『アレスタ』の立場は正直弱いものがありました。しかし、いくら技術的には上とはいえども、全12面で一面あたり5分前後掛かる『ザナック』はいかんせんクリアーまでに時間が掛かりすぎでした。『アレスタ』も一面クリアーするのに同等の時間が掛かりますが、ステージが『ザナック』の半分である全6面なので、元々シューティングに手軽な爽快感を求めている筆者にとってはボリューム的には丁度良いサイズでした。しかし、コンティニューは無制限で使えますが、『ザナック』同様、最終面でミスしてコンティニューを使うと、前のステージに戻されるのが厳しいところです。
ただ、セガはアーケード上がりのメーカーだけに、家庭用ソフトでもバランス調整がインカムを意識した高難易度な作品ばかりでしたが、本作では確かに若干難易度が高いですが、他社製作という事もあり、制限付きとはいえコンティニューは標準装備、エクステンドは早いので、同機種のソフトの中ではまだ万人でも楽しめるバランスだとは思います。
ちなみに筆者は、リアルタイムでのプレイはしていなく、中学生時代(1992年頃?)にハマっていたメガドライブの『武者アレスタ』(東亜プラン/コンパイル)をプレイして以来、初代『アレスタ』が気になりました。当時はセガマークIIIやマスターシステムを持っていなかったので、プレイの機会に恵まれなかったのですが、それから数年後、ソフトとハードを揃え、ようやく念願の『アレスタ』をプレイすることができました。ただひたすら撃って破壊すれば先に進められる『武者アレスタ』とは違い、『アレスタ』は敵がやや硬く、弾避けの要素もある作りだったので、最初は取っ付きが悪かったのですが、2番のウェポン(タメ時に自機の前方にバリアが張られる貫通弾)がかなり万能だとわかり、それを知ってからサクサク進められるようになり、そこからハマってしまいました。最初の印象がイマイチでしたが、大味さが魅力な『武者アレスタ』とは違ったゲーム性が気に入り、セガマークIII作品の中でももっともやり込んだソフトでもあります。
ただ、筆者はリアルタイムでプレイしていなかったので気にしてなかったのですが、1986年に発売されたファミコン版『ザナック』から2年の歳月を経て本作が発売されたのにも関わらず、その2年間の進化が感じられない「焼き直し程度」の作りには賛否があったと思います。『ザナック』が発売された1986年としては凄いゲームでも、技術進歩の早いゲーム業界においての2年間は遥か遠い昔なので、『アレスタ』が発売された時にはすでに時代遅れと感じた人もいたはずです。もし『アレスタ』をリアルタイムでプレイしていたら評価は変わっていたかも知れません。
流石にシリーズの一作目ということもあり、後のシリーズに比べれば見た目が地味ですが、サブウェポンを使い分ける楽しさや、パターンのないアドリブ性の高い作りが、本作ならではの緊張感を生み出し、今でもたまに引っ張り出して遊びたくなる名作です。
海外版『アレスタ』である『POWER STRIKE』のパッケージ。タイトル変更以外は国内版と同内容。
注目したいのは、パッケージ左上のジャンル表記。当時はまだゲームのジャンル分けが確立していなかったのか、本作は「アクション」と表記されています。なお、1993年に発売された続編『POWER STRIKE II』では「シューティング」に直されています。